No.1 1999/10/03
静電気の常識のウソ

 ちゅうねんの私が子供だったころ(1960年代にはそうだったっけなあ)、石油類を運ぶタンクローリー車は鎖を地面にたらしてがらがらと引きずって走っていたものです。それは、車体にたまる静電気で火花が発生して積荷のガソリンなどに引火する危険があるので、静電気を地面に逃がすためだと言われていました。私はそのように本で読んだ記憶があります。
 しかし、いつのころからか、鎖を引きずるタンクローリー車はまったくなくなりました。そんなことをするのはまったく無意味だとわかったからです。
 実は、ゴムタイヤは絶縁体ではなく、金属ほどではないにしろ電気を通すのです。そのため、地面に対する車体の電位はいつもゼロに保たれるので、車体に静電気がたまることはほとんどないのです(ディーゼル車の排ガスに含まれる帯電粒子を浴びて一時的に車体の電位が変わることはあるそうですが)。
 タンクローリー車の鎖がなくなっても、1970〜1980年代ころに、「車体の静電気を地面に逃がす導電性ゴムベルト」だとか、「車体の静電気を空中に放出するアンテナ状の棒」と称するカー用品が売られていました。今は見かけませんが、もし売っていても買ってはいけません。何の役にも立たないインチキ商品ですから。
 じゃあ、空気が乾燥している時に車体に触るとビリッと感電することがあるのはなぜ?もしかしたら、車体が帯電するからと思っている人が今でもいるかもしれません。本当は、人体の方が服との摩擦などで帯電するからです。
 感電を防ぐには、車のキーかコインを指で強く持ってそれで車体に触るという方法があります。指とキーやコインとの接触面積が大きいので、人体の静電気が車体を通して地面に逃げる時の電流密度が低くなり、したがって電撃が小さくなります。
 また、車から降りた後にドアに触って感電することもあります。これを避けるには、降りる時に手でドアの金属部分(塗装面でもよい)に強く触れながら足を地面に付けるのが良い方法です。

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