No.22 1999/12/17
セールス電話撃退法(闘争編)
会社で働いていると、よく勤務時間中に利殖や英語教材や資格取得講座や自己啓発セミナーなどのセールス電話がかかってきます。十分な予備知識なしにうっかり勧誘にのると、多大な損失をこうむる危険があります。セールスマンの口車に乗せられてトラブルに巻き込まれた事例は、枚挙にいとまがありません。ここで述べるのは、特に社会人になって間もない方々のために、すれてしまったちゅうねんのおぢさんから贈るアドバイスです。
まず、あなたが心しておくべきことは、(あなたが自営業である場合を別として)あなたの時間は雇用者(あなたが会社員であれば会社、公務員であれば国や自治体)が買っているということです。しつこいセールスマンは、1時間でも2時間でもかけてあなたを口説き落とそうとします。それが彼らの仕事です。しかし、勤務時間中にあなたがそれに引きずられるのは雇用者に対する裏切りであると心得てください。あなたの雇用者は、あなたが業務に無関係なことに費やす時間に対して給料を払っているわけではないのです。勤務時間外に会って説明を聞く約束をするなり、断るなり、さっさと切り上げるようにしましょう。
勧誘に応じるか断るかをすみやかに決断するためには、自分は何がほしいのか、あるいはほしくないのかという考えをふだんからはっきりさせておくことです。あなたは本当に金儲けがしたいのですか?英語がうまくなりたいのですか?将来のために資格を取得したいのですか?自己啓発がしたいのですか?そうであれば、その望みを実現するために自分に最も適した方法をまず自分で考えなさい。そのために、自らいろんな情報を集める行動をさっさと始めなさい。本でもインターネットでも、手段はいろいろあるはずです。「できるといいなあ」と思っている程度であれば、本当にほしいのではないのです。態度が煮え切らない段階で特定の業者の勧誘にのるのは危険です。選択の目が曇るからです。
敵は、自分の生活のために自分たちの商品やサービスを売り込もうと必死です。もしかしたらあなたも営業マンの苦労を知る立場かもしれません。しかし、敵に同情してはいけません。売り込まれるあなたは消費者の立場です。消費者には選ぶ権利があります。あなたが真に満足できる買い物をするため、また、不必要なものを買わされて損をしないために、あなたがやるべきことは敵と闘うことです。勧誘にのって説明を聞くにしても、「この点で他社のこの商品の方が優れている」と言えるくらいの予備知識は持っておくべきです。勧誘への応対は、自らの選ぶ権利を守るための闘争なのです。
さて、ここまでお読みいただけばご理解いただけるでしょう。勧誘にのってよいのは、たとえば「ちょうど今、有利な利殖の手段を探していて、いろんな業者から説明を聞こうと思っていたところだ。ぜひあなたからも説明を受けたい」とあなたがはっきりと言える場合だけです。そのようなケースはまれでしょう。ほとんどの場合、あなたは「金儲けができるといいなあ」「英語がうまくなれるといいなあ」「将来のために何か資格を持てるといいなあ」あるいは「もっと人間的に成長できるといいなあ」などと思っている程度でしょう。それならば、今の段階でははっきりと断るべきです。もし勧誘がきっかけで心を動かされたなら、まずいったん断ったうえで、自ら情報を集める行動を始めなさい。それが、セールスマンの口車に乗せられて損をしないための安全策です。そしてまた、無駄な時間を浪費させられないための防衛策です。
では次に、勧誘を断るための心がまえを述べましょう。
時間を無駄にしないための最も良い方法は、セールス電話だとわかった時点で、相手にしゃべる暇を与えずにさっさと電話を切ることです。気の強い人なら、黙って、あるいは
「迷惑なんだよ。馬鹿野郎!」
と怒鳴って電話をたたき切ることもできるでしょう。しかし、あなたがそれほど気の強い人でないか、あるいはあとで嫌がらせをされることが心配なら、
「すみません、興味がありませんので、失礼します」
と言って電話を切りましょう。もし電話応対の礼儀が身に染み付いている人ならば、
「申し訳ございません。私には興味がございませんので、失礼いたします」
と慇懃無礼に言ってもよいでしょう。
こちらから先に電話を切るのは、むしろ礼儀にかなったことです。商品やサービスの売り手はお客様よりも後に電話を切るのが礼儀とされているからです。それを心得ておいて、敵がしつこく勧誘を続けようとするのを聞かないうちに先に電話を切るようにしましょう。
また、初めは愛想が良いのに、勧誘を断られたと知るやいきなり乱暴に電話を切るやからもいるものです。そんな無礼者に気分を害されないためには、断りの言葉を入れたらさっさと電話を切るのが無難です。
くれぐれも、勧誘に応じないという意思をはっきり示すようにしてください。間違っても、しつこい勧誘にうんざりして「はいはいはい、わかりましたよ」と投げやりに言ってはいけません。「あなたは『わかった』と言ったから契約は成立している」という強弁で勝手に品物を送り付けられるというトラブルの事例があります。また、「結構です」と言うのも、「結構」は「良い」という意味もあるあいまいな言葉なので危険だとも言われています。
しかし、敵もさるもの、消費者の欲望や、英語が得意でないとか自分に自信を持てないなどの弱みにつけ込んで、あの手この手でたくみに口車に乗せようとすることが多いものです。すみやかに断りへ持っていく例をいくつか挙げておきましょう。たとえ興味を惹かれても「興味がない」という態度をとるように気を付けてください。
「○○様は、お金を上手に増やしたいとお思いですよね?」
「利殖ですか。私は、汗水たらして働いて世間さまから報酬をいただく正直な生き方をしたいと思っておりまして、不労所得を狙うことには興味がありませんので、失礼します。」がちゃん
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「○○様は、節税対策には興味をお持ちではありませんか?」
「節税ですか。私は、納税は国民の義務であって、社会のために税金を拠出できることが誇りであると思っております。その拠出額を減らすために策を弄することには興味がありませんので、失礼します。」がちゃん
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「今、世の中では、国際的に活躍できる人材が求められておりますが、○○様は英語はおできになりますか?」
「英語では困っていませんので(*)、失礼します。」がちゃん
(*) もし英語ができなくても、英語が必要な場面にふだん出会わないならば、嘘ではない。:-P
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「リストラの嵐が吹き荒れて、先行きが不透明な時代ですが、○○様は将来のための資格取得についてどのようにお考えですか?」
「自分の人生は自分で決めますので、ご心配いただくにはおよびません。失礼します。」がちゃん
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「ただ今からご案内を読み上げますのでお聞きください。今、産業界では、様々な面において有能な人材が求められております。そこで、産業界をリードできる人材を育成するために、経済学、経営学の一流の講師陣をそろえ、…」
「すみません、ただ今勤務中ですので、弊社の業務に関係のないご用件でしたら承りかねます。失礼します。」がちゃん
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また、「○○大学卒業生の皆様にご案内を差し上げております」あるいは「○○学会会員の皆様に…」とか「御社人事部様のご紹介で…」とか言って、あたかも出身校や学会や会社から請け負った用件であるかのように錯覚させて話に引き込もうとする手口もあります。実は、名簿屋に流出した同窓会名簿や学会名簿や社内名簿を利用して片っ端から勧誘しているにすぎないので、気を付けましょう。「それは○○大学から(あるいは○○学会から、弊社から)要請されたご用件ですか?」と突っ込むとぼろを出します。業務に無関係であることを確認したら、さっさと断りましょう。
さらに巧妙な手口には、「おめでとうございます。あなたが○○キャンペーンに当選されました。弊社においでくだされば賞品を差し上げます」と言って誘い出すものもあります。自社のオフィスに閉じ込めてしつこいセールスでマインドコントロールにかけようという手口ですから、くれぐれも誘いにのらないように気を付けてください。「あ、そうですか。どうもありがとう」とでも言ってすぐに切りましょう。
次回は、職場にセールス電話が頻繁にかかってこないようにする方策について述べます。