No.126 2002/03/15
英語のメールが飛び込んできたら

 私のネットフレンドのpineappleさんから、英語のメールが飛び込んできたので助けてほしいというメールを受けました。pineappleさんの承諾をいただいて掲載します。
 その英語のメールは、イギリスの旅行サービス会社からのもので、pineappleさんのウェブサイトに掲載された桜島の風景画像のコピーの使用許可を求める、次のような内容でした(一部、英語のまま示します)。

Dear Sir or Madam,

 国際旅行サービス事業者である○○旅行社を代表してご連絡いたします。
 私どもは今、旅行者の主たる目的地へのオンライン旅行ガイドを準備しているところで、あるいくつかの国や都市へ人々が旅行したくなるような情報や画像を提供したいと思っています。
 私は今、日本ガイドを調査中です。私の調査の過程で、桜島の画像を見つけることが必要となり、あなたのウェブサイトにたどり着きました。私は、日本を紹介して日本への旅行を促進する目的のために、http://…/….jpgの画像を使うことの許可をお与えいただけるかどうかお伺いしたく存じます。画像は、弊社が運用するウェブサイトで使われます。
 私どもは画像の使用への支払いの財源を持っていないのですが、ご指定に従って著作権証明の提示をいたします。データの権利と権益はすべて、画像の所有者であるあなたに帰属します。
 お読みくださり、ありがとうございます。ご返事をお待ちします。

Kind Regards,

…(署名)…

 先方からの英文は非常に礼儀正しい書き方でした。
I would like to ask you whether you would grant me permission to use the following image, http://…
(http://…の画像を使うことの許可をお与えくださるかどうかお伺いしたく存じます。)
という具合です。これは、中学の英語の知識で読めるくらいの
Would you please permit me to use the following image, http://…
(http://…の画像を使うことを許可してくださいますか?)
という丁寧な言い方よりも、遠慮を込めたさらに丁寧な言い方です。英語でも、このような“持って回った”婉曲な言い方でへりくだるものなのです。しかし、このような丁寧な文は、英語に慣れていない日本人が辞書を引きながら読解するには簡単ではないでしょう。
 pineappleさんは、この英語のメールの大意はつかめたものの、返事を英文でどう書いたらよいのかわからないとのことでした。それは無理もありません。「May we use your image?」「Yes, you may.」という簡単な会話文とはわけが違うのですから。

 私は、精確度の高い前記の訳を送ってあげて、「どう答えたいかだけ言ってください。あとはきちんとしたビジネスレターに仕上げてあげます」と伝えました。そして、「利用を承諾する。私の名前を表示してほしい」という要旨を受けて、次のような意味の英文を作ってあげました。

Dear **** ****,

 私はMs. **** ****と申します。お問い合わせありがとうございます。
 桜島の画像http://…/….jpgのコピーをあなたのウェブサイトで使うことのお申し出を受諾します。画像の近くに「photo by **** ****」と私の名前を表示していただければと存じます。
 私の写真が日本への旅行を促進することを望んでいます。

Best regards,

…(署名)…
(注)日本人の感覚では、相手の名前に敬称を添えなければ非常に失礼という気がしますが、英語では、相手の性別に確証を持てない場合は、「Mr.」「Ms.」を付けずに「Dear …(氏名)」としても失礼になりません。また逆に、自分の性別を知ってもらうために自分の氏名に「Mr.」「Ms.」を付けてもかまいません。

 pineappleさんがそれを送ったら、先方から次の返事が来ました。

Dear ****,

 メールをありがとうございます。ご援助に深く感謝いたします。
 使用させていただくかどうかの最終決定権は編集担当にあるのですが、使用させていただく場合は、もちろん「photo by **** ****, Kagoshima Japan」と著作権表示をいたします。
 重ねてお礼申し上げます。

Best wishes,

…(署名)…

 「appreciate」(深く感謝する)という語を使った丁寧な謝辞で、こちらから求めなかった地名、国名の表示もすると気を利かせてくれていました。この礼状は、感謝の気持ちとpineappleさんに対する親近感をその人自身の言葉で表現していることが感じられるものでした。社命を背負って遠慮を込めた書き方だった依頼状に比べ、pineappleさんにもよく理解できたとのことでした。「こんなに喜んでくれたのは、返事を出す日本人がほとんどいないからかもしれない」とpineappleさんはおっしゃっていました。
 それにしても、日本語のサイトが外国から注目されることもあるんですね。おそらく先方は、日本語の文章は書けないまでも、「桜島」という日本語文字を入力して検索をかけてpineappleさんのサイトを見つけたのだろうと思います。当たり前のことでしょうけれども、ビジネスのためとあれば外国人も懸命に日本語を読もうとするものなのでしょう。

 さて、皆さんもこのように突然英語のメールを受けて、それが一方的な宣伝メールでなく、自分に何かを丁寧に依頼しているものらしいとわかることがあるかもしれません。もちろんどなたでも私に連絡をくださればサポートしますが、英語が得意でないけれどもなんとか自力でコミュニケーションを図りたいと思った場合の方法を提案します。
 ポイントは、英語が得意でないことを開き直って、中学生レベルの英語を使い、相手にも同レベルの英文を求めることです。

Dear **** ****,

   My name is **** ****.  Thank you for your e-mail.
   Excuse me but I can hardly read polite English.  Will you please
write me simple English?

Best regards,
…(ローマ字署名)…
訳:
 私は**** ****と申します。メールをありがとうございます。
 すみませんが、私には丁寧な英語を読むのが困難です。簡単な英語を書いていただけますか?

 「polite」(礼儀正しい)という語を使って相手を持ち上げれば、先方は、「自分の丁寧な姿勢は通じている」とわかってくれるでしょう。そして、「(英語国の)子供が読めるような英文を書けば読解してもらえるだろう」と察してくれて、次のように依頼を書き直してくれるかもしれません。

Dear ****,

   Thank you for your reply.
   May we use your image, http://…?
訳:
 ご返事ありがとうございます。
 私どもはあなたのhttp://…の画像を使ってもよろしいですか?

 何を答えればよいかがわかったら、中学生レベルの英語で回答すればよいでしょう。

Dear ****,

   Yes, you may.
   Please be patient with my poor English.

Best regards,
訳:
 はい、よろしいです。
 英語が下手ですみません。

 これで意図は伝わるでしょう。承諾したくない場合は、「No」ではあまりにぶしつけですが、「I'm sorry, I can't.」くらいの簡単な文でも十分通じるでしょう。
 本当は「私の写真が日本への旅行を促進することを望んでいます」のような社交辞令の一つも書き加えるとよいのですが、そういうのを書けなくて気が引けるなら、「Please be patient with my poor English.」とでも言い訳を書いておけば、相手はわかってくれるでしょう。頼まれても何も返事しないよりはましというものです。

 ところで、英語でメールを書く時の重要な注意事項を一つ。
 決して全角文字は使わないように。特に、全角スペースを入れてしまっているのには気付きにくいものです。全角スペースは、日本語対応でないメーラーでは「!!」に文字化けします。日本語入力(IMEなど)を必ずオフにして書くように、また、署名もローマ字で書くように気を付けてください。

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