No.47 2000/04/29
エスカレーターでどっちに立つ?(続編)

 エスカレーターで、急ぐ人のために片側を空けて立つ時に、大阪では右側に立ち、東京では左側に立つという慣習の違いはなぜだろうかという話を第17回で書きました。4月23日の読売新聞でその謎が解けました。
 エスカレーターで片側を空けるのは、1970年の大阪万博の時、阪急電鉄梅田駅で「急ぐ人のために左側を空けてください」とアナウンスしたのが最初のきっかけだったそうです。なぜ左側を空けるように求めたのかというと、「利き手である右手で手すりにつかまる人が多いはず」という理由だったそうです。その後、1993年から京阪電気鉄道でも同じアナウンスを始めました。つまり、関西では鉄道会社の主導でこのマナーが定着したということです。
 一方、東京で右側を空けるのは、「自然発生的なものだろう」とありました。なぜ空けるのが右側なのかは述べられていませんでしたが、私は、第17回で述べたとおり、利き手の反対側である左側を防御しようとする人間の本能で自然にそうなったのだと思います。
 つまりこういうことです。「どちらでもいいから片側を空けてください」と言われれば、多くの人は本能的に左側に立つことを選ぶものです。ところが、大阪の鉄道会社はそのことに気付かず、右手で手すりをつかむのがよいと思って、右側に立つよう要請しました。そのように要請されたので、大阪の人々はそれに応じました。一方、東京では、そういう要請がなかったので、多くの人々は人間の本能に従って「急ぐ人には自分の右側を通過してもらおう」と左側に立つようになったと考えられます。
 ただ、その記事によると、ヨーロッパでは大阪と同じように左側を空けるそうです。なぜそうなのかはわかりません。

 ところで、その読売新聞の記事のきっかけは、読者からの「右側を空けるのは当たり前なの?」という投書でした。体が不自由なために右手でしか手すりをつかめず、右側に立っていたら、後ろから来た人に「右側に立つな」と怒鳴られたというのです。
 みんなが左側に立っている時に一人右側に立っている人がいたら、もしかしたらそうせざるをえない人なのかもしれません。周りに気配りをしない非常識な人と決め付けるのはやめましょうね。

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